Guidebook for Diagnosis and Treatment of Hreditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome 2017

用語集

用語集

本診療の手引きでは以下の用語を用いる。

1.遺伝性乳癌卵巣癌症候群( hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC syndrome)

現在はBRCA1 あるいはBRCA2 の生殖細胞系列の変異に起因する乳癌および卵巣癌をはじめとするがんの易罹患性腫瘍症候群を指す。将来は,他の原因遺伝子の生殖細胞系列変異による類似の病態もHBOC syndrome に包含される可能性がある。単に遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)ともいう。

2.BRCA 遺伝学的検査

HBOC の診断のためにBRCA1 およびBRCA2 の生殖細胞系列における変異を調べる検査。通常は末梢血を用いてPCR-direct sequence およびMLPA により解析する。

3.未発症BRCA 変異保持者

がんを発症していないBRCA1 あるいはBRCA2 変異保持者。「保因者」という用語は,一般には常染色体劣性遺伝形式の疾患においてヘテロ接合で変異を有するため発症に至らない人を指すため,HBOC では用いられない。

4.リスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)

リスク低減両側卵管卵巣摘出術ともいう。事前の画像診断で卵巣にがんの診断がないと判断された状況で,卵巣癌・卵管癌のリスク低減のために両側卵巣卵管を切除する術式を指す。

5.サーベイランス

BRCA 変異保持者を対象として,乳腺および卵巣などのがんのハイリスク臓器に対する検査を計画的に行うこと。

6.クライエント

遺伝カウンセリングの来談者。がんの未発症者や変異の可能性が不明な血縁者,さらに家族など関係者も含まれ得る。

7.リスク低減乳房切除術(risk reducing mastectomy:RRM)

事前の画像診断で乳房にがんの診断がないと判断された状況で,乳癌のリスク低減のために乳房を切除する術式を指す。片側の乳癌術後に対側の乳房を切除する対側リスク低減乳房切除術(contralateral risk reducing mastectomy:CRRM)および乳癌の非罹患者が両側の乳房を切除する両側リスク低減乳房切除術(bilateral risk reducing mastectomy:BRRM)の2 つに分けられる。

8.Variant of uncertain significance(VUS)

遺伝学的検査において,標準塩基配列とは異なっているが病的意義が不明なバリアント。一般には1 塩基置換によるミスセンス変異やインフレームの小欠失などが含まれる。

9.浸透率(penetrance)

ある年齢までに表現型が出現するリスク。HBOC の場合には一般に70 歳までに乳癌あるいは卵巣癌などが発症するリスクを示す。

10.遺伝子名の表記について

一般に遺伝子名はイタリックで示す(例:BRCA1 遺伝子)。本診療の手引きでは「遺伝子」を省略し,イタリックのみで当該遺伝子を指すこととする(例:BRCA1)。

11.病的変異

疾患の原因となる遺伝子の変化。バリアント(variant),あるいはdeleterious ともいう。本診療の手引きでは単に「変異」とし病的変異を表す。

PAGETOP