Ⅱ-3 卵巣癌領域
RRSO後の原発性腹膜癌のサーベイランスの方法について,現時点で推奨を示せるほどのデータはない。しかしながら,複数のRRSO施行後の原発性腹膜癌例の報告からは,特にRRSO時にSTICを認めた場合は,原発性腹膜癌発生のリスクが上昇する可能性があることに留意する必要がある。
BRCA1/2病的バリアント保持者において,RRSOは卵巣癌・卵管癌・原発性腹膜癌の発生リスクを低下させる最も有効な予防法であるが,RRSO施行後も,原発性腹膜癌発生のリスクがあるとされている1)2)。ここではRRSOを施行した後の原発性腹膜癌に対するサーベイランスに関して検討を行った。
RRSO後の原発性腹膜癌のサーベイランスの方法について,下記キーワードを用いて文献検索を行ったところ,PubMedではRRSOとperitoneal cancerとの組み合わせにより32件,医中誌ではRRSO,腹膜癌,サーベイランスの組み合わせにより162件の文献が検索されたが,サーベイランスの方法に関して直接的に検討した文献は認められなかった。そこで,RRSO後に原発性腹膜癌を発症した症例に関する複数の後方視的研究について検討した。
該当論文はなかった。
1~4.9%程度と報告されている1)~5)。
BRCA1の病的バリアントが多い,RRSO施行時の年齢が高い,RRSO検体におけるSTICの併存が多いという報告がある6)。特にRRSO検体におけるSTICの併存については複数の報告があり5)7),RRSO検体にSTICを認めた78例を集積したシステマティックレビューによる検討においては,78例のうちBRCA病的バリアント保持者または高リスクの個人歴または家族歴をもつ症例は67例で,その中の3例(4.5%)で原発性腹膜癌を認めている8)。
RRSO後に原発性腹膜癌を発症した36例の検討では,RRSO施行から原発性腹膜癌発症までの期間(中央値)は54.5カ月であった6)。その他,少数例の報告であるが,RRSO施行300例のうち,3例に原発性腹膜癌が発生し,RRSO施行から原発性腹膜癌発生までは53,75,92カ月後であったという報告9)や,RRSO検体にSTICを認めた78例のうち,BRCA病的バリアント保持者または高リスクの個人歴または家族歴をもつ症例は67例で,その中の3例(4.5%)に原発性腹膜癌が発生し,RRSO施行から原発性腹膜癌発生までは43,48,72カ月であったという報告があった8)。原発性腹膜癌診断の契機は,症状の出現(直腸圧迫感,腹部圧迫感,腫瘤感,疼痛)やCA125の上昇などが報告されている7)。
これらの報告を総合すると,現時点では原発性腹膜癌に対するサーベイランスについて,推奨するほどのエビデンスはない。ただRRSO検体でSTICを認めた症例においては,原発性腹膜癌発症の可能性に留意する必要があり,CA125の測定を考慮してもよいと考える。またRRSO後5年以内の発生が多いものの,5年以上経過してからの発症例があることにも留意が必要である。
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