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施設認定事業
施設認定事業

HBOC診療の施設認定がめざすところ

HBOCが疑われる患者を診た場合、遺伝カウンセリングを受けることをおすすめし、遺伝カウンセリングの際には、HBOCという遺伝性疾患の概念をしっかり理解していただいたうえで、検査を受けるかどうかに関するインフォームドコンセントを得ることが肝要です。BRCA1/2の病的変異が認められた場合は、その後の予防的対策として①サーベイランス(年1回のマンモグラフィ+MRI検査など)、②化学予防(リスク低減薬物療法)、③リスク低減(予防的)外科治療(乳房切除術、卵管卵巣摘出術、あるいは両方)、が選択肢として挙げられ、患者個々にとって、相応しい治療法の選択肢が複数提示されることが求められています。また,BRCA1/2の病的変異が認められなかった場合でも,Variant of Unknown Significance (VUS) や検査の限界などについての理解を深めるための説明を行い,適切に対処することが必要です.

これら一連の診療を提供するには、HBOCの知識と診療技術を有する臨床遺伝専門医、乳腺専門医、婦人科腫瘍専門医の連携が重要で、更に質の高い医療を提供するには、認定遺伝カウンセラーや乳房再建術、腹腔鏡手術、妊孕性温存などに詳しい専門医の協力を得る必要があります。1つの医療機関で全ての機能を揃えている施設は、現時点では全国に十分配置できているとはいえず、各地域で医療機関が連携し、補い合うことで対応していくことが求められます。

このHBOCの診療体制を患者並びに医療関係者に分かりやすく示すために、HBOC診療を行う施設を「基幹施設」、「連携施設」、「協力施設」の3つに区分して施設認定を行い、どの施設に行けばどのような医療サービスを受けることが出来るか公表することとしました。施設認定の要件を下表に示します。詳しい要件は「施設認定事業規則」を参照ください。HBOC診療体制を整備することにより、将来的にはHBOC診療管理加算などの保険適用や、認定遺伝カウンセラー®の国家資格化に関する道を拓くことも目標としています。

一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 理事長
昭和大学臨床ゲノム研究所 所長/乳腺外科 特任教授 中村 清吾