第1条[目的]
この事業は遺伝性乳癌卵巣癌 [1] およびその疑いがある患者・家族の診療体制の整備拡充を推進することにより、国民医療の向上に貢献することを目的とする.
第2条[組織・運営]
第1条の目的を達成するために日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の助言の下、日本医学会分科会である日本人類遺伝学会,日本乳癌学会,日本産科婦人科学会が協働して遺伝性乳癌卵巣癌総合診療施設の認定を行う.
第3条[施設認定部会の設置]
第1条の目的を達成するために施設認定部会を設置する.
2.同部会は臨床遺伝領域・乳癌領域・婦人科腫瘍領域の委員により構成する.
第4条[業務]
施設認定部会は以下の事業を行う.
1)施設認定に関する事業
2)認定更新に関する事業
3)認定施設の診療実績の収集に関する事業
4)その他必要な事業
第5条[部会長および委員]
部会長及び委員は,理事会の議を経て理事長が任命する.
2.部会長及び委員の任期は2年とし,再任を妨げないが,連続の場合3期を超えることはできない。
3.部会長が任期途中で退任した場合,理事会の議を経て理事長が後任を任命し,任期は前任者の残任期間とする.
4.委員が任期途中で退任した場合,理事会の議を経て理事長がその補充を行い,任期は前任者の残任期間とする.
第6条[会議]
部会は毎年1回,部会員による会議を開催する。
2.部会長は,必要に応じ臨時の会議を招集することができる。
3.会議は委員の3分の2以上の出席(委任状を含む)をもって成立する。
第7条 [区分]
認定施設は遺伝性乳癌卵巣癌総合診療基幹施設(以下,基幹施設),遺伝性乳癌卵巣癌総合診療連携施設(以下、連携施設),遺伝性乳癌卵巣癌総合診療協力施設(以下,協力施設)とする.
2.施設認定部会は,年1回認定希望施設からの申請を受け付け審査を行う.
第8条[遺伝性乳癌卵巣癌総合診療基幹施設]
基幹施設は以下の10要件全てを満たす.
(1)施設内に遺伝性乳癌卵巣癌の診療責任者(1名)をおく.
(2)独立した臨床遺伝部門が設置されており,HBOCの遺伝カウンセリングを実施する臨床遺伝専門医が常勤している.HBOCの遺伝カウンセリングを実施する認定遺伝カウンセラーが常勤している事が望ましい.
(3)乳腺専門医および婦人科腫瘍専門医が常勤している.
(4)上記(2)および(3)を構成するHBOC診療に従事する専門医および認定遺伝カウンセラー[2]が、教育部会が認証する講習会を受講している.
(5)HBOCに関連するガイドライン等 [3]を遵守した診療体制,特に遺伝カウンセリング及びBRCA1/2の遺伝学的検査の実施体制が整備されている.
(6)BRCA1/2変異陽性者に対する乳癌(マンモグラフィと乳房MRIと乳房超音波検査[4]),卵巣癌(経膣超音波検査とCA125腫瘍マーカー)のサーベイランスを行うための設備および診療体制が構築されている。
(7)BRCA1/2変異陽性者に対する乳癌および卵巣癌のリスク低減手術(RRM および RRSO)を実施できる.
(8)3領域専門医が参加するHBOCに関する定期的なカンファレンスを行っている.
(9)症例登録業務および診療実績の報告を行う.
(10)連携施設・協力施設から症例登録に関する情報を収集し,助言・指導を行うとともに,年次報告を施設認定部会に提出する.
第9条[遺伝性乳癌卵巣癌総合診療連携施設]
連携施設は以下の11要件全てを満たす.
(1)施設内に遺伝性乳癌卵巣癌の診療責任者(1名)をおく.
(2)HBOCの遺伝カウンセリングを実施する臨床遺伝専門医(非常勤も可)または認定遺伝カウンセラー(非常勤も可)が勤務している.
(3)乳腺専門医または婦人科腫瘍専門医が1名以上常勤している.
(4)上記(2)および(3)を構成するHBOC診療に従事する者が,教育部会が認証する講習会を受講している.
(5)HBOCに関連するガイドライン等[3]を遵守した診療体制,特に遺伝カウンセリング及びBRCA1/2の遺伝学的検査の実施体制が整備されている.
(6)BRCA1/2変異陽性者に対する乳癌(マンモグラフィと乳房MRIと乳房超音波検査)または卵巣癌(経膣超音波検査とCA125腫瘍マーカー)のサーベイランスを行うための診療体制が構築されている。どちらかが実施できない場合は、実施可能な施設と連携している.
(7)BRCA1/2変異陽性者に対する乳癌または卵巣癌のリスク低減手術を実施できる.どちらかが実施できない場合は,実施可能な施設と連携している.
(8)複数領域の専門医が参加するHBOCに関する定期的なカンファレンスを行っている。
(9)基幹施設から連携することについての承認を受けている.
(10)診療実績の年次報告を基幹施設に提出する.
(11)症例登録業務を行う.
第10条[遺伝性乳癌卵巣癌総合診療協力施設]
協力施設は以下の7要件を満たす.
(1)施設内に遺伝性乳癌卵巣癌の診療責任者(1名)をおく.
(2)乳腺専門医または婦人科腫瘍専門医が常勤している.
(3)上記(1)および(2)を構成するHBOC診療に従事する者が、教育部会が認証する講習会を受講している.
(4)BRCA1/2変異陽性者に対する乳癌(マンモグラフィと乳房MRIと乳房超音波検査)または卵巣癌(経膣超音波検査とCA125腫瘍マーカー)のサーベイランスを行うための診療体制が構築されている.
(5)基幹施設または連携施設から連携することについての承認を受けている.
(6)基幹施設あるいは連携施設の紹介依頼を受けた患者またはBRCA1/2変異陽性者の総合診療継続の一部を担う事が可能である。
(7)診療実績の年次報告を基幹施設または連携施設に提出する.
第11条[登録申請]
認定施設としての登録を申請する診療責任者は,指定の施設認定申請書類を施設認定部会に提出する.
第12条[認定施設認定証の交付]
施設認定部会が認めた施設に対し,施設認定証を交付する.施設認定の有効期限は3年間とする.
第13条[資格喪失]
認定施設は次の理由により施設認定部会の議を経て,認定施設の資格を喪失する.
1)認定施設の資格を辞退したとき.
2)施設認定部会が不適当と認めたとき.
第14条
この規則は、理事会の議を経て変更することができる.
第15条
本事業を円滑に運用するため,規則を補完する実務上の取り決めを別途,細則に定める.
付則 [施行期日]
この規則は,2018年6月15日から施行する.
この規則は,2018年12月4日に一部改訂した.
この規則は,2019年6月22日に一部改訂した.
この規則は,2023年6月22日に一部改訂した.
付録 施設認定要件一覧
基幹施設 | 連携施設 | 協力施設 | |
---|---|---|---|
臨床遺伝専門医 | ◎ | ○ | |
認定遺伝カウンセラー | △ | ||
乳腺専門医 | ◎ | ○ | ○ |
婦人科腫瘍専門医 | ◎ | ||
HBOC遺伝学的検査実施 | ◎ | ◎ | |
乳癌サーベイランス | ◎ | ○ | ○ |
婦人科サーベイランス | ◎ | ||
RRM | ◎ | ○ | |
RRSO | ◎ | ||
HBOC講習会 | ◎ | ◎ | ◎ |
HBOCカンファレンス | ◎ | ◎ | |
患者登録 | ◎ | ◎ | |
総合診療基幹施設連携 | ◎ | ◎ |
◎:必須,△:望ましい,○:いずれか必須
[1]HBOC (Hereditary Breast and Ovarian Cancer)
[2]将来的には状況に応じて必須要項として改変していく可能性がある.
[3]日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」2011年版、10学会「遺伝学的検査に関するガイドライン」2003年版、日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2018年版、乳癌取扱い規約第18版、日本婦人科腫瘍学会 卵巣がん治療ガイドライン 日本婦人科腫瘍学会編2015年版、日本乳癌検診学会「乳癌発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドラインver.1.0」、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版
[4]現時点ではエビデンスに乏しいが,日本人の乳房超音波検査に対する有用性研究が既に開始されており,研究の評価も含めて実状に合わせて実施項目に加えた
第1条
この細則は日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構が定める施設認定事業規則(以下、事業規則)の施行について必要な事項を定める.
第2条
規則第3条第2項に定める施設認定部会の委員は,以下の構成とする.
部会長 1名
委員 日本医学会分科会である日本人類遺伝学会,日本乳癌学会,日本産科婦人科学会の各々より若干名とする.
第3条
症例登録業務は本法人の登録事業規則および登録事業施行細則に従い,症例登録を行うこととする.
2.基幹施設または連携施設の認定申請を新たに行う場合は,施設認定を申請しようとする年の8月末までに,登録事業部会が指定する登録システムに,登録する症例のデータ入力を完了し,登録を確定させることとする.
3.施設認定を受けて以降の症例登録は,毎年,前年度の3月末日までの症例を,全例8月末日までに登録完了することを原則とする.
第4条
事業規則第7条に定める区分の内、基幹施設および連携施設を、それぞれ「基幹施設」と「暫定基幹施設」および「連携施設」と「暫定連携施設」に分ける.
2.基幹施設は、事業規則第8条に定める要件の(7)について、RRMおよびRRSOの診療報酬の算定に必要な施設基準の届出をし、かつ、未発症者(保険適用外)の手術も含めたRRMおよびRRSOの実施について施設の倫理審査等の承認を得ていることとする.暫定基幹施設については、RRMおよびRRSOの診療報酬の算定に必要な施設基準の届出をしているか、または、未発症者(保険適用外)の手術も含めたRRMおよびRRSOの実施について施設の倫理審査等の承認を得ていることとする.
3.連携施設は、事業規則第9条に定める要件の(7)について、RRMまたはRRSOの診療報酬の算定に必要な施設基準の届出をし、かつ、未発症者(保険適用外)の手術も含めたRRMまたはRRSO(届出と同じ手術)の実施について施設の倫理審査等の承認を得ていることとする.暫定連携施設については、RRMまたはRRSOの診療報酬の算定に必要な施設基準の届出をしているか、あるいは、未発症者(保険適用外)の手術も含めたRRMまたはRRSOの実施について施設の倫理審査等の承認を得ていることとする.
第7条
基幹施設(暫定基幹施設)または連携施設(暫定連携施設)または協力施設は施設認定・登録部会に施設認定を受けた後,認定管理料としてそれぞれ年5万円(内,症例登録管理料2万円を含む),3万円(内,症例登録管理料2万円を含む),2万円を納めることとする.
第8条
診療責任者は,日本人類遺伝学会・臨床遺伝専門医、日本乳癌学会・乳腺専門医、日本婦人科腫瘍学会・婦人科腫瘍専門医の3専門医資格の何れかを有し,かつ当機構教育部会が認証する講習会を受講し、施設認定申請の時点で有効期間が終了していない受講証を有している(要証明)を要件とする.
第9条
基幹施設(暫定基幹施設)は、連携施設(暫定連携施設)および協力施設より年1回、所定の様式を用いて診療実績の報告を受ける.
基幹施設(暫定基幹施設)は、年1回8月に診療実績を施設認定部会に提出する.
第10条
認定施設は,認定後3年ごとに更新申請を行うことを定める。更新条件は各区分ごとの施設認定の要件に準じることとする.
第11条
資格の喪失
1)症例登録業務を著しく怠った場合
2)更新業務を認定期間終了までに行わなかった場合
3)認定期間内に専門医不在となった施設は,認定施設の資格を喪失する.該当施設は速やかに事務局に報告し認定施設辞退報告を行う.
資格の変更
各資格(基幹・連携・協力)の要件を満たす,もしくは満たさなくなった場合,下表のとおり,書類の提出により資格の変更を認める.書類の提出は下表に従うこととする.
資格変更 | 届出時期 |
---|---|
連携(暫定連携)→基幹(暫定基幹) | 年1回(更新時期) |
協力 →基幹(暫定基幹) | 年1回(更新時期) |
協力 →連携(暫定連携) | 年1回(更新時期) |
基幹(暫定基幹)→連携(暫定連携) | 可及的速やかに |
基幹(暫定基幹)→協力 | 可及的速やかに |
連携(暫定連携)→協力 | 可及的速やかに |
*施設認定事業書式ダウンロードのページから書式をダウンロードしてください
第12条
原則として,資格喪失・変更に関与しない届け出内容(人事異動等)の変更は施設更新時期と同時期の年1回とする.ただし,診療責任者が変更となる場合等は,速やかに届け出ること.
2.「暫定基幹施設→基幹施設」および「暫定連携施設→連携施設」の暫定解除については,「暫定」とされた不足する要件(RRM,RRSOの倫理審査承認または施設基準の届出)が充足された場合,随時,その倫理審査通知または届出受理通知の写しを添えて変更の申請が出来る.
第13条
この細則は,施設認定部会の議を経て変更する事が出来る.変更した際は適宜,理事会に報告する.
付則 [施行期日]
この細則は,2018年6月15日から施行する.
この細則は,2018年12月4日に一部改訂した.
この細則は,2019年6月22日に一部改訂した.
この細則は,2021年9月1日に一部改訂した.
[1] 遺伝性乳癌卵巣癌総合診療施設連携協定書
[2] 遺伝性乳癌卵巣癌総合施設認定申請書