がんは,正常な細胞(組織)に遺伝子の変化が起こることで異常な細胞が増え続ける病気であり,からだのどこにでも発生する可能性があります。最近では,一部のがんは予防できることがわかってきています
解説
私たちのからだは,多くの細胞からできており,すべての細胞にヒトの設計図となる遺伝子があります。全身にある遺伝子は,一定の割合で変化が起こっているのですが,私たちのからだには,その変化を元に戻してからだを健康に保つ機能が備わっています。それに対して,がんは,正常な細胞(組織)に起こる変化をうまく元に戻せずに異常な細胞が増え続けます。これにより,周りにある大切な組織を壊したり(図1),血液やリンパの流れにのって,他のがんがない組織に移動したりすることがあります。この異常な細胞のかたまりを「がん」といい,からだのどこにでも発生する可能性があります。
がんはさまざまな要因によって発生するといわれていますが,大きく分けて「生まれもった体質(遺伝要因)」(図2)と「生活習慣などの環境によるもの(環境要因)」がかかわっています(環境要因についてはQ53参照)。これらが遺伝子に変化を与え,細胞が増えるのを止められなくなり,最終的にはがんにつながります。これらの要因を日頃から意識しておくことががん予防の第一歩となります。
現在,日本人は一生のうちに男性は65%,女性は50%ががんになるといわれており,がんは誰にとっても身近な病気だといえるでしょう。皆さんもご自身や家族に限らず,友人,知人,職場の方などどなたかが「がんになった」という話を聞くことは多いのではないでしょうか。昔は,がんは「死につながる病気」とういうイメージでしたが,その後,医学の進歩により「一部のがんは治る病気」となりました。遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の方のがんもこの一つです。これからは,がんを早期で発見し,治療ができるようにがんの検査やご自身の体質を知って,自分に合ったがん予防や対策をしていくことが非常に重要となります。