第2章 HBOCと診断されたら知っておきたい【乳がん】

Q36

男性の乳がん対策について教えてください。

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A

 男性の場合でも,乳がんの早期発見を目的とした自己触診や専門医による定期的な診察,およびマンモグラフィなどの定期検査を受けることをお勧めします。

解説

男性の乳がんは男性600~1,000人に1人の頻度で発症するといわれており,乳がんの患者さんが100人いたらそのうち1人が男性です。男性でも乳腺組織があるため乳がんを発症することは特別なことではないのですが,女性と比べると頻度が極めて低いため,一般的に男性の乳がん検診は行われていません。
しかし,HBOCと診断された男性の場合には,BRCA1遺伝子の変化(病的バリアント)を保持する場合はおよそ100人に1人,BRCA2遺伝子に病的バリアントを保持する場合はおよそ12人に1人が乳がんを発症すると報告されており,一般の男性よりも乳がんが発症するリスクが高いことがわかっています。ご自身がHBOCであるかどうかはご自身や家族の病歴だけではわかりません。確定診断にはBRCA1/2の遺伝学的検査を受ける必要があり,両親やきょうだい,子どもがHBOCと診断されている場合にご自身がHBOCである確率は2分の1となります(Q1参照)。
男性にとっても自分がHBOCかどうかを知ることは,乳がんを含めたがんの早期発見に役立つ可能性があります。

1男性乳がんのサーベイランスについて

HBOCと診断された男性については,自己検診や専門医による定期的な診察およびマンモグラフィなどの定期検査(乳房のサーベイランスと呼ばれています)を受けることが勧められます(図12)。特に家系内に男性乳がんの患者さんがいる方や,ご自身に女性化乳房症じょせいかにゅうぼうしょうのある方など,HBOCに加えて他の男性乳がんのリスク因子をもつ方については,より注意をしてみていく必要があるともいわれています。
男性の乳房のサーベイランスは,健康保険の適用外となるため基本的に自己負担での診療となります。また,HBOCと診断された男性の乳がんのリスクは一般の女性と同等かそれ以下であり,HBOCと診断された女性のようにがんになる前に乳房を切除するリスク低減手術ていげんしゅじゅつは行われておりません。
男性で乳がんを発症した場合の治療は,女性の乳がんの治療と基本的に変わりはありません。手術でがんになった乳房を切除し,必要に応じて放射線治療やホルモン療法(内分泌療法ないぶんぴつりょうほう),抗がん薬治療が行われます。


2乳腺科への受診のしにくさを感じたら

乳腺科を受診される方の多くが女性であるということで「受診をしにくい」,「待合室に居づらい」と思われる方もいらっしゃいますが,病院のスタッフは特別な目でみることはありません。受診のしにくさへの対策として,パートナーと一緒に女性の付き添いできているかのように受診されるなどの工夫をされる方もいらっしゃいます。おひとりで受診をされる場合でも,待合場所の工夫ができるなど何かしらの解決策がある可能性もあるので,病院の受付や看護師に相談をしてみましょう。