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遺伝学的検査の費用と精度について教えてください。

 

遺伝学的検査の費用はなぜ高いのですか?
遺伝学的検査では, 血液に含まれる白血球からDNAを抽出し,BRCA1遺伝子およびBRCA2遺伝子の塩基配列えんきはいれつ用語集参照)を,機械(シークエンサー)を使って読んでいきます(Q5参照)。塩基配列を読むために使うシークエンサーや試薬などには解析費用がかかります。
また,検査会社では遺伝子のバリアント(用語集参照)に対する評価を専門家が行っており,それに基づいて結果の解釈(見つかった変化が病気の発症に関係するかどうか)を行います。正確な解釈のためにさらなる解析を実施することもあり,これにも費用がかかります。遺伝学的検査は海外の検査会社で解析を実施することも多いため,海外への輸送費がかかることもあります。
多くの遺伝子を同時に解析する多遺伝子パネル検査(Q817参照)の場合,DNAの抽出作業やシークエンサーを動かす回数,輸送費が1回で済むことから,単独で調べる場合より1遺伝子あたりのコストが安くなります。
血縁者の診断で用いられるシングルサイト検査(Q8参照)の場合,家族ですでに見つかっている遺伝子の領域に変化があるかどうかを調べるため,解析範囲が狭くなります。そのため,全領域を調べるものよりも費用は安くなります。ただし,現状ではシングルサイト検査は健康保険の適用外となるため,健康保険が適用される遺伝学的検査と大きな差はないと感じるかもしれません。

消費者向け(DTC)遺伝子検査とは精度や内容はどう違うのですか?
近年,購入者自らが唾液だえきなどで採取した検体を,郵送で送り,病気のなりやすさや太りやすさなどの体質を調べ,結果を返却するという市販の消費者向け(DTC)遺伝子検査サービスがあります(コラム4参照)。
検査の費用は,前述の遺伝学的検査と比較すると安価ですが,その精度や内容は大きく異なります()。

これらのDTC遺伝子検査サービスでは,個人間でよくみられるDNAの違い(1 塩基多型:singleシングル nucleotideヌクレオチド polymorphismポリモーフィズム / SNPスニップ)から病気のなりやすさや太りやすさなどのリスクを算出します。リスクを算出する計算式は遺伝子検査を販売する企業によって異なり,公開されていません。同じ項目でも検査会社が違うと結果が変わることもあり,注意が必要です。

DTC遺伝子検査サービスのほとんどは有用性についての科学的根拠(エビデンス)が欠如しており,精度管理が不十分であるといわれています。医療機関で実施されるBRCA1/2遺伝学的検査は,BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子という1つの遺伝子が乳がんや卵巣がんなどの発症に強くかかわることがデータとして十分わかっています。DTC遺伝子検査サービスで調べているSNPは一つひとつが病気の発症との関連性が小さいものが多く,それだけでリスクを高めると断言できないものもあるためです。
また,結果が郵送のみの場合や,遺伝カウンセリングなどの相談できる場所がない場合もあり,遺伝カウンセリングの実施体制が整っているか,結果について医療者や専門家に相談できるか,事前の確認が必要です。

正確な診断のためには,遺伝カウンセリングを受診されたうえで,遺伝学的検査を受けていただくことが必要です。