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リスク低減卵管卵巣摘出術とリスク低減乳房切除術を同時に受けることはできますか?

 

HBOCと診断された後,遺伝カウンセリングや卵巣・乳房のサーベイランスの場において,卵巣がんや乳がんのリスクを低くするリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)やリスク低減乳房切除術(RRM)が勧められます。これらの手術による卵巣がんや乳がんの予防効果は明らかであり,実際に手術を受けようと決心される方も多いと思いますが,その際に2つの手術を同時に受けることを希望する方もいるかもしれません。RRSOとRRM を同時に受けることはできます。

同時に受けることのメリットは,まず何よりも1回の手術でがん発症へのご自身やご家族の不安を大きく減らすことができることです。そして,手術や全身麻酔への不安や緊張を感じることも1回で済むことも良い点かもしれません。
また,手術費用自体は2つの手術が合わせて請求されますが,手術の際の入院費や麻酔管理費などは1回分のみの請求となりますので,2つの手術を両方とも受けようと決められた方にとっては経済的なメリットもあります。
入院期間もそれぞれの手術を別個に受けた際の合計よりも一度に受けたほうときのほうが短いこともメリットいえます。

一方でデメリットとしては,1回の手術で卵巣,卵管,乳房を同時に取ってしまうことで女性としての身体的イメージの変化,喪失感が大きくなるおそれがあります。2つの手術を同時に受けることで手術の傷の痛みも倍になることを心配されるかもしれませんが,RRSOは腹腔鏡ふくくうきょう手術という小さな傷口のみで行える手術ですので,傷の痛みが倍になることは心配されなくて大丈夫です。

ここまでメリット,デメリットを比較してみて,同時に受けることのメリットのほうが多いように感じられる方は同時手術も検討してみてください。
しかし,すべての病院で同時手術ができるわけではなく,病院によってはRRSOやRRMのどちらかに対応できなかったり,婦人科と乳腺外科の合同手術のため,日程調整や入院調整に時間がかかる病院もあります。また,乳房再建を希望される場合には形成外科などの協力も必要なため,やはり対応できる施設が限られます。リスク低減手術を同時に受けるご希望があれば,まず現在通院中の担当医の先生に相談してみてください。