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本ガイドブック作成にあたって ~本書の使い方~

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を取り巻く社会環境はこの数年で大きく変化し,臨床現場においても医療者,患者さん,そしてそのご家族にもさまざまな影響をもたらしています。そのような背景の中,2021 年7月に発刊された「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン」は最新の研究成果を詳細に吟味,検討したうえで丁寧に解説しており,臨床現場で幅広く使われてきていますが,一方でその内容は医療者向けの少し難しいものとなっています。「もう少しわかりやすく教えてほしい」,「こんなときどうすればよいですか?」,そのような患者さんからの声に応えて,遺伝性乳がん卵巣がんがより身近なものとなる本を作ろうというプロジェクトが2021年夏に始まりました。Q(クエスチョン)として取り上げる項目を選定し,何をどのように伝えるかを議論し,そして誰にとってもわかりやすいA(アンサー)と解説文が完成しました。また,内容が患者さん,市民の方々の目線となるよう,患者・市民参画Patient and Public Involvement(PPI)という考え方を取り入れ,延べ82人にものぼる患者さん,市民の方々に作成過程からご意見をいただきながら本書を一緒に作ってまいりました。バッグに入る大きさにしてほしい,買い求めやすい価格にしてほしい,という声にもお応えしてA5判,税込で2千円を切るという医療ガイドラインとしては異色ですが,患者さん,市民の方々に最も近いものを作ることができたという自負があります。

 

本書は,「1 章.HBOCについて知っておきたい」,「2 章.HBOCと診断されたら知っておきたい」,「3章.日常生活での注意点について知っておきたい」の3章で構成されています。教科書などのようなものではなく,読み物としてHBOCを理解しながら読み進められるように作られていますので,最初からゆっくり読んでHBOCのことを知っていっていただければと思います。一方で,すでにHBOCのことをある程度ご存知で,今悩んでいることや,疑問点などが明確な方は,気になるQ(クエスチョン)のところから目を通されてもよいかもしれません。また,最近のトピックスやより詳しく知っていただきたい項目についてはコラムという形でご紹介していますし,困ったときに使える情報サイト,現在の保険適用の状況を分かりやすくまとめた表,本書内で出てくる難しい専門用語についての解説などを資料集として巻末にご用意してありますので,読み進めながらご確認ください。

 

本書の名前は,HBOCについてこれから知っていかれる皆さまの案内本となるべく「みんなのためのガイドブック」といたしました。ぜひ本書を手にとって皆さまの足元,目の前を照らしていただきご自身の進むべき道を歩んでいただければ幸いです。
本書の作成にあたり,正しい情報を本当にわかりやすく伝えようと志を同じくして取り組んでくださった作成委員,執筆協力者,アドバイザーの方々,そして作成趣旨をご理解いただき出版を引き受けてくださった金原出版と担当の宇野和代さんには感謝の念に堪えません。われわれの思いの込もった本書が,HBOCにかかわるすべての方のお役に立てることを祈っております。

2022年5月

遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!みんなのためのガイドブック 
作成統括リーダー
小林佑介