第2章 HBOCと診断されたら知っておきたい【卵巣がん】

Q43

リスク低減卵管卵巣摘出術を受けるべきか,サーベイランスを継続するべきか決められません。

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卵巣がんの発症を予防できるのは,リスク低減卵管卵巣摘出術ていげんらんかんらんそうてきしゅつじゅつ(RRSO)のみです。サーベイランスは,卵巣がんを予防することはできませんので,適切な時期にRRSOの選択を検討しましょう。

解説

HBOCと診断された後,リスク低減卵管卵巣摘出術ていげんらんかんらんそうてきしゅつじゅつ(RRSO)を受けるか,サーベイランスを継続するか,皆さん悩まれると思います。卵巣がんの予防という観点だけではなく,将来の妊娠・出産の希望,性生活への影響,更年期症状こうねんきしょうじょうなど,生活への影響を考えると,決断することは簡単ではないでしょう。

RRSOは,卵巣がんにならず,卵巣がんによる死亡を回避し,生命予後(用語集参照)を延長するというのが最大のメリットで,強く推奨されます。しかし,デメリットとして現在の日本では,RRSOの前に妊孕性温存療法にんようせいおんぞんりょうほうを行っていないかぎり,RRSO後の妊娠・出産ができません(例外についてはQ25参照)。RRSOによる女性ホルモンの減少に伴う更年期症状,高脂血症こうしけっしょうや高血圧の発症,性生活が行いにくくなるといった影響が出る場合もあります(Q44参照)。手術は腹腔鏡手術ふくくうきょうしゅじゅつで行われることが多いですが,出血や感染などの手術関連合併症しゅじゅつかんれんがっぺいしょうのリスク,入院が必要である点も考慮しなければなりません。また,HBOCと診断された乳がん既発症きはっしょう者では健康保険の適用となりますが,HBOCと診断されていても乳がん未発症の方は健康保険の適用外であり,経済的にも負担があります。
一方,サーベイランスについては,卵巣がんを予防できないことが最大の問題点です。しかし,将来的にお子さんをもつという希望を継続することができ,女性ホルモン減少に伴う日常生活への影響は考えなくてよいことはメリットとなります。
にRRSOとサーベイランスの影響についてまとめます。
卵巣がんの治療は進歩しているものの,今でも治りにくいがんの一つです。また,治療にかかる時間や身体的な負担は大きいです。卵巣がんになり,命を落とすことを避けたいとお考えであれば,RRSOの選択を強く推奨します。ただ,さまざまな理由で,RRSOを選択できない状況にある方もいるかもしれませんので,もし今どちらにするか決められず悩んでいるのであれば,身近な方や医療者といったあなたのサポーターと,その悩みを共有し,話し合いを続けるのがよいと思います。よい時期に,ご自身にとって納得できる選択ができることを願います。