第3章 日常生活での注意点について知っておきたい

Q53

生活習慣で気をつけるべきことはありますか?

お花の画像
A

 HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん,hereditary breast and ovarian cancerの略)に限って特別に悪い影響を及ぼすと考えられている生活習慣は今のところ知られていません。まだ研究データは不十分ですが,一般の方を対象としたデータと大きな違いはないとされています。一般的には,禁煙,バランスの取れた食生活,節度のある飲酒,適正な体重維持,身体活動を増やすことが,がん予防に大切であるといわれています。

解説

1禁煙

喫煙きつえんに関しては,HBOCに関連するがんだけではなく,他のがんや病気への影響も大きいとされています。また,受動喫煙じゅどうきつえんでもリスクが高まるがんがあることが知られています。タバコを吸っている人は禁煙をすること,吸っていない人もタバコの煙をできるだけ避けて生活をすることで,がんになるリスクを上げないようにすることができます。

2適正な体重の維持

肥満ひまんは,HBOCにおいても乳がんになるリスクを高める可能性があるという報告があります。また,肥満はがんだけではなく,他の生活習慣病せいかつしゅうかんびょうのリスクも高めることは明らかになっています。
一方で,せすぎの場合についてはHBOCに関する十分なデータはありませんが,一般的にがんを含むすべての原因による死亡リスクは,太りすぎでも痩せすぎでも高くなるといわれています。日頃から体重の管理,特に体重の増加に気をつけることがとても大切です。

3食生活

HBOCに関して特別に悪い影響を及ぼすという食生活について明らかなものは報告されていません。HBOCに限らず,野菜や果物の摂取不足や塩分の取り過ぎは,がんのリスクを高めることが知られています。しかし,野菜や果物を多く取ればがんのリスクが下がるかという点については明らかになっていません。がんによいとされている食べ物についてもさまざまな情報があるかもしれませんが,極端に偏った食事はがんだけではなく他の病気への影響が出ることも考えられるため,バランスの取れた食生活を送ることが大切です。
また,サプリメントや健康食品を摂取することで,がんになるリスクが下がるというデータはありません。HBOCのがん予防を目的にサプリメントなどを摂取することは勧められていません。

4節度のある飲酒

HBOCを対象とした研究では,アルコールの摂取とがん発症リスクとの関連は明らかになっていません。関連があるとする報告や,関連はみられないという報告があり,統一された見解はありません。ただし,HBOCに限らず,アルコール飲料の摂取によりがんの発症リスクが高まることは知られていますので,がん以外の他の病気を予防するという観点からも,節度のある飲酒が勧められます。

5身体活動

身体活動とHBOCの関連についての報告は多くはないものの,活動量が多い人は,がんのリスクが低いというデータがいくつか報告されています。一般的には,身体活動の量が多い人ほど,がん全体のリスクが下がるといわれていますので,普段の生活の中で,仕事や家事を含めた身体活動の量を少しでも増やし,運動習慣をもつことが,がん予防の観点からも推奨されます。