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BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の両方に,病気に関連した遺伝子の変化があったらどうなりますか?

 

私たちはBRCA1遺伝子,BRCA2遺伝子をどちらも2つずつもっています。BRCA1遺伝子,BRCA2遺伝子のどちらかのうち,さらに同じ2つの遺伝子の一方に病気に関連した変化(病的バリアント:用語集参照)をもつとHBOCとなります(表②,③)。
では,BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の両方の片方ずつに病的バリアントを保持している場合どうなるのでしょうか? この場合,一般的なHBOCと比べて乳がんの発症リスクはやや高まり,卵巣がんの発症リスクはBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の中間くらいになると報告されています(表④)。ただ,これは海外のデータから導き出されたものであり,報告自体も少ないため日本人の集団についてのリスクはまだ研究の段階です。現段階ではサーベイランスやリスク低減手術ていげんしゅじゅつについては通常のHBOCと同様のものが推奨されます。これが起こる可能性はHBOC全体の中の1%以下と低いことが報告されています。
また,同じBRCA遺伝子の両方に病的バリアントを引き継いだ場合どうなるのでしょうか?BRCA遺伝子はがんを予防する以外にも細胞分裂が正しく行われるように調整をするような役割もあり,BRCA1遺伝子の場合は多くの場合,出生に至らず(表⑤),BRCA2遺伝子の場合にはファンコニ貧血という別の病気として症状に現れます(表⑥)。これらが実際に起こるのもまれなことです。大人になるまでに造血器障害ぞうけつきしょうがいなどを指摘されていなければ,ご自身については心配しなくてもよいかもしれません。
血縁者の中で初めてHBOCの遺伝学的検査を受ける場合や,健康保険が適用されるBRCA1/2遺伝子検査を受ける場合には,基本的に検査のときに前述のような遺伝子の組み合わせが起こっていないかの確認がなされています。すでに遺伝学的検査の結果を受けとっている方で指摘されていなければ,前述のような遺伝子の組み合わせはもっていないと考えてよいでしょう。
両親やカップルともにHBOCを疑うような家族歴がある場合や,血縁者でこれらについて指摘されている方がいる場合など,心配がありましたら遺伝カウンセリングで相談してみましょう。


両親ともにHBOCの場合の子どもへの受け継がれ方
両親ともにHBOCの場合,両親のHBOCに関連していない遺伝子をどちらも受け継ぐ確率は4分の1(図1),両親どちらか片方のHBOCに関連した遺伝子の変化を受け継ぐ確率は4分の2(図2または3),両親のHBOCに関連した遺伝子の変化をどちらも受け継ぐ確率は4分の1です(図4)。まとめると,両親ともにHBOCの場合,子どもがHBOCではない確率は4分の1(25%),HBOCに関連した遺伝子の変化を1つ以上保持する確率は4分の3(75%)となります。