HBOCと診断された女性は,乳がんを発症するリスクを減らすことを目的にリスク低減乳房切除術(RRM)を,卵巣がん・卵管がん・腹膜がん(以下,卵巣がん)を発症するリスクを減らすことを目的にリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を受けることができます。
しかし現在,HBOCと診断された女性がリスク低減手術を希望された場合でも,すべてが健康保険の適用とは認められていないのが現状です。
現時点で健康保険の適用となっているリスク低減手術は,乳がん既発症の方が対側のリスク低減乳房切除術(CRRM)もしくはRRSOを行う場合と,卵巣がん既発症の方が両側のリスク低減乳房切除術(BRRM)を行う場合に限られています。その他の場合,例えばがん未発症でHBOCと診断された方がリスク低減手術を行う場合や,RRSOと同時に正常の子宮を摘出する場合は,2022年現在は健康保険の適用外となり自己負担での手術となります。
また,健康保険の適用となるリスク低減手術を行うためには,各病院が厚生労働省の定めた施設基準を満たしている必要があるため,すべての病院で健康保険の適用となるリスク低減手術ができるわけではありません。また自己負担での手術の場合には,健康保険の適用とならない手術であるため,病院での手続き(倫理申請など)が必要であり,さらに限られた施設のみで対応しているというところが現状です。
現在通院されている病院でリスク低減手術が難しい場合には,リスク低減手術が可能な施設を紹介してもらう必要があります。その場合,ご自身が希望されているリスク低減手術が健康保険の適用と認められている手術か,自己負担となる手術かどうか,によって紹介してもらう医療機関が変わってくる可能性があります。まずは現在通院されている医療者にご相談いただき,どの医療機関を紹介してもらうかをご相談いただくのがよいと思います。
ご自身で調べる場合には,日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)のウェブサイト上で,健康保険でリスク低減手術が可能な施設を調べることができ, 参考になります(https://johboc.jp/shisetsunintei/shisetsulist/)。
手術を受ける場合には,手術前後に複数回の通院が必要となりますので,通院のしやすさや,お住まいからの交通の便なども一緒に検討いただくとよいと思います。