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消費者向け(DTC)遺伝子検査とは何でしょうか?

 

インターネットで“遺伝子検査”と検索してみると,“自宅でできる遺伝子検査”を紹介するウェブサイトをいくつも見つけることができます。このようなウェブサイトでは「あなたの体質がわかる」や「病気のかかりやすさを知ろう」といった言葉がおどり,専用の容器に唾液だえきを入れて郵送すれば,「がんのリスク」や「生活習慣病せいかつしゅうかんびょう」,「太りやすさ」などがわかると紹介されています。検査結果はウェブサイトなどから確認できる仕組みが多く,唾液を入れる容器と検査結果を閲覧するウェブサイトの利用がセットになって,数千~5万円くらいで利用できます。このような誰もが閲覧できるウェブサイトや一般向け雑誌などで宣伝されている遺伝子検査サービスのことを「消費者向け遺伝子検査」や「DTC(Direct-to-consumer)遺伝子検査サービス」と呼びます。

それでは,DTC遺伝子検査サービスとはどのような検査サービスなのでしょうか?
はいくつかの遺伝子検査を整理して分類したものです。DTC遺伝子検査サービスは,表の3~5のカテゴリーに分類する遺伝子検査で,表の1~2の医療行為として扱う(遺伝学的)検査とは異なり,健康保険が適用されません。表の3のカテゴリーには,複数の遺伝子や環境要因がさまざまに影響して起こると考えられている生活習慣病(高血圧症こうけつあつしょう,遺伝性以外のがんも含まれます)の発症リスクや体質にかかわる遺伝子を調べる検査も含まれます。

このように聞くと,DTC遺伝子検査サービスでは,生活習慣病へのかかりやすさを正確に調べられると感じるかもしれません。しかし,生活習慣病は多数の遺伝子がかかわっていること,食習慣や生活環境など遺伝因子以外の影響が大きいことが知られており,医学的に生活習慣病へのかかりやすさを診断するには,このような遺伝子の状態を調べるだけでは不十分です。
一方,病院で行う遺伝子検査(遺伝学的検査)は,病気の診断が目的の「医療行為」で,遺伝子と病気との因果関係が強いことが科学的に確認されており,DTC遺伝子検査サービスとは,検査の目的や得られる結果からわかる情報が大きく異なります。DTC遺伝子検査サービスでは,現在かかっている病気の有無や,特定の病気に将来かかるかどうかまではわからず,検査を行った方への健康管理上の助言や体質の傾向を示す程度にとどまります。