第1章 HBOCについて知っておきたい

Q10

HBOC と知ることの意義は何でしょうか?

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A

HBOCかどうかを知ることは医学的にとても重要です。HBOCと診断された場合,がん早期発見のための検査や治療が大きく異なる可能性があります。HBOCの特徴に合わせた検査や治療により,ご自身,さらには血縁者についてもがんで亡くなる可能性を減らすことができます。一方で,HBOCと知ることによって何をメリットや気をつける点と考えるかは,一人ひとりで異なります。HBOCかどうかを知ることの意義について医療機関で十分に相談してみましょう。また,遺伝カウンセリングでは今できる最善の選択は何かということを一緒に考えることができます。

解説

HBOCと知ることで以下の対応が可能になります。
●計画的な生涯にわたるサーベイランス(Q21参照)やリスク低減
Q3241参照)の方法
●治療法の選択
●血縁者への対策

1計画的なサーベイランスやリスク低減の方法

HBOCと診断された場合,どのようながんがどの程度できやすいのかという情報が得られます。そのため,HBOCの特徴に合わせたより丁寧できめ細かい対応をすることができます。サーベイランスは一般的な検診とは異なり,検査の頻度,方法,開始年齢などが異なります(Q2131424951参照)。また,リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)やリスク低減乳房切除術(RRM)が選択肢として検討できる場合があります(Q3241参照)。

2治療法の選択

一定の条件下でPARPパープ阻害薬そがいやくという分子標的薬ぶんしひょうてきやくを使うことができます(Q26参照)。また,乳がんの場合,術式を検討する要因の一つになる場合があります(Q38参照)。

3血縁者への対策

血縁者に同じ遺伝的な特徴があるとわかると,計画的なサーベイランスやリスク低減の方法を検討することができるなど,今後の健康を管理するうえでとても重要な情報になります。また,血縁者がHBOCではない場合には,その情報を知ることにより無駄な検査や心配をする必要がなくなる場合もあります。

以上のように,HBOCと知ることでできることはたくさんあります。一方で,がんになりやすい体質であるということや,今後の治療について,あるいはご家族へどのように伝えるか,子どもへの遺伝についてなど,不安や心配が生じる場合があるかもしれません。また,HBOCと知ってもわからない部分もあります。例えば,どのがんを何歳で発症するのか,または生涯発症しないのかなど,具体的な年齢までは予測できません。また,HBOCではないとわかった場合でも,生涯がんにならないということが保証されるわけではありません。
もちろんHBOCかどうかを調べずにいるという選択肢もあります。その場合,HBOCの特徴に合わせた対策をとることはできませんが,これまでの病歴や家族歴に合わせた対策について医療機関で相談しましょう。
 HBOCかどうかを知る意義はよくわかるが,遺伝学的検査を受けるかどうかについて迷いが生じたり,今は遺伝学的検査を受けたくないと思うこともあるかもしれません。そのように頭では理解できていても気持ちが追いつかないことは珍しくありません。また,すぐに決められない場合でも,時間とともに気持ちが変化することもあります。HBOCと知り,その情報を有効に活用し今後のご自身やご家族の治療や健康管理に役立てることで初めて意義が出てきます。今のご自身にとって納得のいく選択ができるように遺伝カウンセリングを利用しましょう(Q11参照)。