第2章 HBOCと診断されたら知っておきたい

Q24

未成年の子どもに HBOC のことを伝えるときの注意点はありますか?

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A

未成年の子どもにHBOCのことを伝えるときには,子どもの成長の様子や個性,家族やご自身の状況を考慮すること,事前にシミュレーションをしてみること,ごまかさずに伝えることが大切です。

解説

未成年の子どもにHBOCや遺伝のことを伝える場合には,まずは子どもの成長の様子や個性,家族やご自身の状況を考慮する必要があります。その方法やタイミングは一様ではなく,幼いうちから少しずつ伝え,親の病院受診に一緒に連れてくる家族や,子どもが成長し大人と同じくらいの理解力が身についた頃を見計らって伝える家族などさまざまです。伝える前にはシミュレーションを行い,自分が伝えたいことを書き出してみたり,子どもがどのような反応をするか予測したりするなどしてみましょう。伝える際には,子どもから質問があったときも含めて,ごまかさずに伝えることが大切です。また一度にすべてを伝えようと思わず少しずつ伝えること,子どもの理解や反応をみながら繰り返し説明することが勧められます。ご自身がまだ気持ち的に話せない,向き合えていないという状況で子どもから質問があったときは,「今はまだ話せないけど,準備ができたらちゃんと伝えるからね」など,伝える意思はあるがまだ自分の準備ができていないことを素直に伝えましょう。伝えようとした際に,子どもに「話を聞きたくない」というような拒否の反応があった場合には,「話を聞きたくなったらいつでも教えてね」などと声をかけ,子どもの気持ちが変わるまで待ちましょう。
伝え方で困ったときに,HBOCや小児の心理に詳しい専門家の手を借りることができる場合もあります。まずは病院でどのようなフォローが受けることができるのか相談をしてみましょう。

1HBOCのことを子どもに「伝えない」という選択や,家族で「伝える」・「伝えない」の意見が分かれたとき

子どもに「伝えない」ということも尊重される選択です。しかし,この場合であってもHBOCについてしっかりと正しい情報を得たうえで判断することが大切です。医療者から子どもに対して,親がHBOCであることを勝手に伝えることはありません。ただ,医療者が家族に説明をする際など最大限配慮できるように,HBOCであるということを家族の誰に伝えていて,誰には伝えていないのか情報共有しておくことをお勧めします。
夫婦などで子どもに伝えるか否かで意見が分かれた際には,基本的にはHBOCである当人の意見が尊重されます。ただ,それぞれの気持ちや考えを知っておくことは大切です。なぜ伝えたいのか,なぜ伝えたくないのか,その理由は何か,コミュニケーションを取りお互いの考えを知ることでより良い答えがみえてくる可能性もあります。また,お子さんの遺伝情報はお子さんのものであり,そのお子さんの気持ちになって考えてみることも大切なことでしょう。

2子どもの発達に合わせたコミュニケーションの工夫

個人差はありますが子どもの発達にはある程度共通した特徴があり(発達段階),その特徴を知ることは子どもとコミュニケーションを取るときの参考になることがあります(参照)。

3子どもの年齢に関係なく子どもの〇〇が心配なとき

このQでは,主に未成年の子どもにHBOCのことを伝えるということに焦点を当てました。しかし,親子という特別な関係性によって,お子さんの年齢に関係なく子どもに対してさまざまな心配が生じることがあるでしょう。親子の関係性や心配な事柄,その心配が生じる背景は人それぞれであるため,ここで具体的にお答えすることはできませんが,遺伝カウンセリングの場ではその相談をすることができます(Q11参照)。心配や不安という感情は,現状や未来を変えたいという原動力にもなりえます。まずは遺伝カウンセリングで相談をしてみましょう。