第1章 HBOCについて知っておきたい

Q4

がんは遺伝しますか?

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A

がん細胞そのものは遺伝しませんが,生まれもった遺伝子の変化(病的バリアント:用語集参照)は受け継がれる可能性があります。病的バリアントを保持する方は,がんになりやすい体質といえます。

解説

がんと診断された方のうち,10 人に1人くらいは生まれつきがんに関連する遺伝子に病的バリアントを保持しています。生まれもった病的バリアントが原因で起こるがんを「遺伝性のがん」と呼びます。遺伝性のがんの場合,がん細胞そのものが遺伝するのではなく,病的バリアントが受け継がれます。生まれつき病的バリアントを保持する方は,そうでない方よりもがんになりやすいため,がんになりやすい体質だといえます。
同じ遺伝子の病的バリアントを受け継いだ家族でも,食の好みや性格,関心の違いから生活習慣やからだの動かし方などがそれぞれ異なります。生まれた後に起こる変化が複雑に影響し合っているので,病的バリアントを受け継いでいたとしても発症するかどうかはわかりません。また,いつがんを発症するかという予測はできません。また,親と子どもの顔や背格好が似ていたとしても,同じがんになりやすい体質をもつかどうかはわかりません。ご家族にがんの方がいなくてもがんを発症することもあります。ご自身ががんになりやすい体質と診断されれば,一人ひとりに合ったがんの予防や治療に活用できることがあります。
遺伝子は父親と母親から1つずつ受け継ぐため,二つ一組として存在します。がんの多くは,さまざまな要因の影響で両親から受け継いだ遺伝子の両方に変化が起こっています。遺伝子の両方に変化が起こることは,誰にでも起こり,同じ遺伝子に2回変化が起こるには時間がかかります。遺伝性のがんでは,生まれつき片方の遺伝子に病的バリアントを保持するため,一度の遺伝子の変化でもがんにつながります(Q1参照)。遺伝性のがんでは,若年でも発症する可能性があることや,複数回がんになる可能性があること,特定の臓器にがんを発症しやすいなどの特徴が挙げられます。
 
遺伝性のがんの種類はたくさんあり,発症しやすいといわれているがんの種類も異なります()。遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)では,乳がんや卵巣がん,膵がん,前立腺がんの組み合わせでなりやすいとわかっています。乳がん患者さんの中では100人に4人,卵巣がん患者さんの中では100 人に10~15人程度がHBOCに関連する遺伝子に病的バリアントを保持していると報告されています(Q7参照)。
本ガイドブックでは,HBOC について解説しています。