卵巣がんのサーベイランスでは,卵巣がんを予防することができません。リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を選択しない場合に限り,経腟超音波検査と腫瘍マーカーCA125の測定を行うことを検討します。
解説
卵巣がんは,サイレントキラーと呼ばれ,おなかが張る,おなかの違和感といった自覚症状が出ても気づきにくいがんです。さらに,短期間に進行することが多く,定期的な診察を行っても,早期発見することが難しいがんです。したがって,一般の検診(対策型検診)で卵巣がん検診を行うことは推奨されていません。
対策型検診とは異なり,きめ細かく計画的に,がんの早期発見を目的に行う検査をサーベイランスと呼びます。卵巣がんのリスクが高いHBOCと診断された方に対する,卵巣がんのサーベイランスの効果は十分ではありません。卵巣がんの予防効果,生命予後(用語集参照)の延長効果が明らかであるリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が,最も効果的な対策であり,RRSOを選択しない場合に限り,サーベイランスの施行を検討します。
1サーベイランスの方法
卵巣がんのサーベイランス方法としては,経腟超音波検査(図)と腫瘍マーカーCA125の測定を行うことが提案されています。経腟超音波検査は,内診台に上がり,腟内に超音波プローベを挿入し,子宮や卵巣・卵管の異常,腹水の有無などを確認します。性交経験がない場合や痛みが強い場合には,肛門から超音波プローベを挿入する経直腸超音波検査で代用できることがあります。腫瘍マーカーCA125は,血液検査で行います。CA125は卵巣がんだけではなく,子宮内膜症や子宮腺筋症,月経中など,がん以外の原因でも高値となることがあります。
2サーベイランスの開始時期
サーベイランスの開始年齢や検査間隔について,定まった方法はありません。ただ,HBOCと診断された卵巣がん患者さんの場合,35歳以降でがんになる方が多いため,サーベイランスの開始は30~35歳,あるいは家系内で卵巣がんになった方の発症年齢より5~10歳早くから行うのがよいでしょう。サーベイランスの間隔については,3~12カ月を目安に,担当医と相談して決めましょう。なお,卵巣がんのサーベイランスは,健康保険の適用外となっています。
定期的な受診は,病気への意識をもち続け,自覚症状にいち早く気づけることにつながります。また,結婚や妊娠・出産などのライフイベントに合わせた相談を医療者と続けることができる重要な機会ともなりますので,RRSOを選択しない場合は,サーベイランスを受けることをぜひ検討してください。ただし,卵巣がんのサーベイランスは,卵巣がんを予防することはできませんので,適切な年齢で,卵巣がんの最も有効な予防方法であるRRSOの実施を,積極的に検討してください。